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もう動かない農機具を、鉄くずとして引き取ってもらおうと考えている。どうせ大した金額にならないだろう、と思われているかもしれません。
その見立ては、半分は当たっています。鉄くずで出すと、受け取れるのは重量の分だけです。
ただし、農機具にはもうひとつの物差しがあります。機械として評価される場合、金額は重量と関係なく決まります。
この記事では、鉄くずの金額がどう計算されるのかを示したうえで、機械として売った場合と何が違うのかを整理します。
\鉄くずと比べる前に、機械としての金額を知る /
結論|農機具を鉄くずで売ると重量分にしかならない
鉄スクラップとして出した場合、計算式はひとつです。
重量 × 単価。これだけです。
エンジンがかかるかどうか、アワーメーター(=稼働時間計)が何時間か、作業機が揃っているか。いずれも金額に反映されません。溶かして原料に戻す前提だからです。
一方、中古機や部品として売る場合は逆になります。重量は関係なく、使えるかどうかで決まります。
同じ一台に、まったく違う2つの物差しが当てられている。ここが出発点です。
農機具の鉄くず価格はどう決まるか|重量×単価
単価は公開されていて、毎月変わる
鉄スクラップの価格は、一般社団法人日本鉄リサイクル工業会が価格推移表として公開しています。
北海道・東北・関東・中部・関西・中四国・九州の7地域について、直近12か月分が円/トンの単位で掲載されています。月に一度ほど更新されます。
出典:一般社団法人日本鉄リサイクル工業会「価格推移表」(日刊市況通信社 資料より)
この記事に単価の数字は書きません。月ごとに動き、地域でも差があるためです。上の出典で、お住まいの地域の現在値を見てください。
公開単価より、手取りは下がる
ここは押さえておいてください。公開されている単価がそのまま受け取れるわけではありません。
- 公開されているのは主に炉前価格(電炉メーカーが買い取る価格)
- 持ち込み先の業者の取り分が差し引かれる
- 引き取りに来てもらう場合は運搬費も差し引かれる
- 混ざり物(タイヤ・ゴム・オイル)の処理分が引かれることもある
農機具はタイヤやゴム部品が付いており、燃料やオイルも残っています。鉄だけの重量ではないという点も、計算を下げる方向に働きます。
農機具を鉄くずにするといくらになるか
自分の機械でどのくらいになるかは、重量が分かれば概算できます。
重量はカタログの「機体質量」で分かる
メーカーのカタログや取扱説明書に機体質量が記載されています。型式が分かれば、メーカーの公式サイトで確認できることもあります。
おおよその桁を掴んでおくと、話が早くなります。
| 機種 | 重量の桁 |
|---|---|
| 歩行型の耕運機・管理機 | 数十kg〜100kg台 |
| 乗用の田植機 | 数百kg |
| 作業機(ロータリー等) | 数百kg |
| トラクター(小〜中型) | 1〜2トン台 |
| コンバイン | 2〜3トン台 |
型式による幅が大きいため、あくまで桁の目安です。正確な数値はカタログの機体質量で確認してください。
計算してみる
やり方は単純です。機体質量(トン)× 現在の単価(円/トン)。ここから業者の取り分と運搬費が引かれます。
たとえば1.5トンのトラクターなら、単価が1トンあたり2万円と仮定した場合、3万円という計算になります。ここから差し引きがあるので、手元に残るのはそれ以下です。
この2万円という数字は、計算の仕方を示すために置いた仮の値です。実際の単価は先ほどの出典で確認してください。
ここで気づいていただきたいのは、金額そのものより計算に「機械の状態」がまったく入っていないことです。
鉄くずと農機具買取では何が違うか|評価される項目
買取に出した場合、見られるのは別の項目です。
| 鉄くず | 機械としての買取 | |
|---|---|---|
| 金額の決まり方 | 重量 × 単価 | 使えるかどうか |
| エンジンの状態 | 関係ない | 大きく効く |
| 年式・稼働時間 | 関係ない | 効く |
| メーカー・型式 | 関係ない | 効く |
| 作業機・付属品 | 重量に加算されるだけ | まとめて評価される |
| 不動の機械 | そのまま重量分 | 部品取りとして値がつくことがある |
表の右列を見てください。鉄くずでは金額に一切影響しない項目が、買取では全部効きます。
実際の買取額は機械ごとに幅があり、ここで数字を示すことはできません。ただし物差しが違う以上、結果が大きく離れることがあるのは構造から分かります。
動かなくても、鉄くずとは限らない
「エンジンがかからないから鉄くずしかない」と考える方が多くいます。ここが誤解の入り口です。
買取業者は、部品取りや修理を前提に引き取ることがあります。同じ型式を現役で使っている人にとって、程度のよい中古部品は貴重だからです。
エンジンが破損していても、ミッションや油圧、電装部品が生きていれば対象になります。
古くても、鉄くずとは限らない
年式についても同じです。構造が単純な年代の機械は、部品さえあれば直しながら使えます。
国内では古すぎると見なされる機械でも、別の市場では現役として扱われることがあります。
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「スクラップ買取」と「農機具買取」は別のもの
ここで言葉の整理をしておきます。どちらも「買取」と名乗るため、混同しやすいところです。
| 金属回収・スクラップ業者 | 農機具の買取業者 | |
|---|---|---|
| 見ているもの | 重量と金属の種類 | 機械として使えるか |
| 出口 | 溶かして原料に戻す | 中古機として再販/部品/輸出 |
| 査定にかかる時間 | 短い(計量が中心) | 実機の確認が要る |
| 型式を聞かれるか | ほぼ聞かれない | 必ず聞かれる |
「型式を聞かれるかどうか」が、いちばん分かりやすい見分け方です。
型式やアワーメーターを聞かずに「引き取ります」と言う相手は、機械としてではなく重量として見ています。それ自体は正当な商売ですが、金額の根拠が違うということです。
「スクラップ買取」で検索して出てくる業者
多くは金属回収の業者です。農機具も扱いますが、評価の軸は重量になります。
機械としての価値を確かめたいなら、農機具を専門に扱う業者に見てもらう必要があります。コンバインの脱穀部やトラクターの油圧は、農機具を知らないと評価できません。
両方に聞いてから決める
どちらか一方に決める必要はありません。金属回収業者と農機具買取業者の両方に聞き、高いほうを選べば済みます。
金属回収のほうは、重量と単価が分かれば自分で概算できます。実質的に確かめるべきは、機械としていくらになるかだけです。
それでも鉄くずが向いている3つの場合
鉄くずが常に損というわけではありません。次の場合は合理的な選択です。
- 骨格まで腐食が進んでいる|フレームや床板が抜けていると、直す前提が崩れます
- すでに解体・分解されている|機械としての形が残っていない状態です
- 買取査定で値がつかなかった|複数社に確認したうえでなら、納得して選べます
3つ目が大切です。「値がつかなかった」は、査定を受けてから分かることです。
1社に「値段はつきません」と言われた場合、それはその業者の販路では扱えないという意味であることがあります。海外の販路や部品の売り先を持つ業者なら結果が変わることもあります。
農機具の処分で順番を間違えないための手順
鉄くずに出すのは、いつでもできます。逆に、出してしまったら戻せません。
- 1|機体質量を調べる|カタログか銘板で確認します
- 2|現在の鉄スクラップ単価を見る|地域別の価格推移表で確認します
- 3|鉄くずにした場合の概算を出す|これが比較の基準になります
- 4|買取査定を受ける|複数社に同じ条件で聞きます
- 5|高いほうを選ぶ|やることはそれだけです
3番まで自分でやっておくと、査定額が妥当かどうかを自分の数字で判断できます。業者の言い値を受け入れる必要がなくなります。
その場で決めるよう促されたら、いったん保留にしてください。鉄くずの単価は急に変わりません。
鉄くず以外の処分方法と依頼先
鉄くず以外にも、手放す方法はあります。それぞれ費用の出方が違います。
日ごろ取引のあるJAに相談する方法もあります。ただし買い替えを伴わない処分は、費用の話になることがあります。
なお、金属回収を依頼する場合も、業者の許可の有無は確認してください。無許可の回収業者については環境省が注意を呼びかけています。詳しくは処分方法の記事にまとめました。
農機具の鉄くず・スクラップ買取でよくある質問
田植機を鉄くずに出すといくらになりますか
乗用型で数百kgが目安です。機体質量に地域の単価を掛け、業者の取り分と運搬費を引いた額になります。
ただし植付部が生きていれば、部品としての需要が残ります。先に査定を受けてみてください。
鉄くずの単価はいつ高くなりますか
相場の先読みはできません。価格推移表で過去12か月分の動きは見られますが、今後を予想して待つのはおすすめしません。
待っている間に腐食が進み、機械としての価値のほうが先に落ちます。
タイヤやオイルはどうすればよいですか
鉄以外のものは別処理になり、その分が差し引かれることがあります。事前に業者へ確認してください。
買取であれば、そのままの状態で見てもらえます。自分で外す必要はありません。
自分で運び込めば高くなりますか
運搬費が引かれない分、持ち込みのほうが有利になることはあります。
ただし大型機は自走できないと運べません。積載車の手配費を考えると、差が出ないこともあります。
解体してから出したほうが高いですか
おすすめしません。手間がかかるうえ、解体してしまうと機械としての買取ができなくなります。
選択肢を自分で狭めることになります。まずはそのままの状態で査定を受けてください。
まとめ
- 鉄くずは重量 × 単価。機械の状態は一切反映されない
- 単価は日本鉄リサイクル工業会の価格推移表で地域別・月次に確認できる
- 公開単価は炉前価格が中心。業者の取り分と運搬費が引かれる
- 買取では、鉄くずで無視される項目(エンジン・年式・型式・作業機)が全部効く
- 動かない・古いというだけでは、鉄くず行きの理由にならない
- 鉄くずの概算を自分で出してから査定を受ける。比較の基準を持てる
- 解体しない。出してしまうと戻せない
鉄くずに出すのはいつでもできます。順番だけ、間違えないようにしてください。
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