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トラクターを売ったが、確定申告でどう扱えばよいのか分からない。そもそも申告が要るのか。
先にお伝えします。事業として農業を営んでいる方が事業用の農機具を売った場合、原則として申告の対象になります。
ただし所得の区分が独特で、多くの方が誤解しやすいところです。この記事では国税庁の資料をもとに整理します。
- この記事は一般的な取り扱いを整理したものです
- 実際の扱いは、資産の取得価額・帳簿の付け方・事業形態によって変わります
- 最終的な判断は、税理士または所轄の税務署に確認してください
結論|事業用の農機具を売却したら申告の対象になる
ここで多くの方がつまずきます。事業用の農機具を売った代金は、事業所得ではありません。
国税庁は、譲渡所得の対象とならない資産として次のものを挙げています。
- 事業用の商品などの棚卸資産
- 使用可能期間が1年未満の減価償却資産
- 取得価額が10万円未満の減価償却資産
- 一括償却資産の必要経費算入の規定の適用を受けたもの
出典:国税庁 タックスアンサー No.3105「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」
裏を返すと、取得価額が10万円以上で、何年も使ってきたトラクターやコンバインは「譲渡所得」に当たるということです。
売上として事業所得に足すのではありません。ここが最初の分かれ目です。
農機具売却の税金|私物と事業用で扱いが違う
まず自分がどちらに当たるかを確認してください。
| 事業用(農業を営んでいる) | 私物(家庭菜園など) | |
|---|---|---|
| 帳簿への記載 | ある(減価償却してきた) | ない |
| 所得の区分 | 原則として譲渡所得 | 譲渡所得 |
| 申告の要否 | 金額により必要 | 特別控除の範囲なら不要なことが多い |
どちらも区分は譲渡所得です。違うのは帳簿に載っているかどうかと、金額の規模です。
家庭菜園用の耕運機を数万円で売った、という程度であれば、後述の特別控除の枠に収まって課税が生じないことが一般的です。
事業用トラクターを売却したときの税金の計算
総合課税の譲渡所得は、次の式で計算されます。
- 譲渡所得の金額 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)− 50万円
出典:国税庁 タックスアンサー No.3152「譲渡所得の計算のしかた(総合課税)」
取得費は「未償却残高」になる
買ったときの値段ではありません。減価償却をしてきた分を差し引いた、帳簿上の残りが取得費になります。
長く使った機械ほど未償却残高は小さくなります。そのぶん、売却額との差が譲渡益として出やすくなります。
耐用年数(トラクターは7年)や、毎年の償却額の計算方法は別の記事で説明しています。
特別控除が年50万円ある
国税庁によれば、特別控除の額はその年の長期の譲渡益と短期の譲渡益の合計に対して50万円です。
1台あたり50万円ではなく、その年の合計に対して50万円という点に注意してください。複数台を同じ年に売った場合は合算されます。
5年を超えて持っていれば半分になる
所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得となり、その2分の1が総合課税の対象になります。5年以内は短期で、全額が対象です。
農機具は長く使う機械です。多くの場合は長期に当たります。
売却額から未償却残高を引いた差が50万円以下であれば、課税は生じないことになります。実際にはこの範囲に収まる例も少なくありません。
\まずは売却額の見当をつけるところから /
農機具の売却・下取りの仕訳と勘定科目の例
ここが最も検索される部分だと思います。ただし書き方は一通りではありません。会計ソフトや税理士の方針で変わります。
以下はあくまで一例として読んでください。
個人事業主の場合は「事業主借・事業主貸」を使う
先に見たとおり、事業用資産の売却損益は事業所得ではなく譲渡所得です。事業の帳簿の外に出るということになります。
そのため、帳簿上は差額を「事業主借」「事業主貸」で処理する方法がよく使われます。
例:未償却残高20万円のトラクターを30万円で売却し、代金が普通預金に入金された場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 300,000 | 機械装置 | 200,000 |
| 事業主借 | 100,000 |
売却額が未償却残高を下回った場合は、逆に「事業主貸」で処理する形になります。
そのうえで、譲渡所得は確定申告書の該当欄に別途記載します。帳簿の処理と申告書の記載は別の作業です。
法人の場合は扱いが変わる
農業法人など法人の場合、譲渡所得という区分はありません。「固定資産売却益」「固定資産売却損」として損益計算に入ります。
個人事業主向けの解説をそのまま当てはめないでください。
帳簿から資産を落とすのを忘れない
売った機械を固定資産台帳に残したままにすると、翌年以降も減価償却を続けてしまうことになります。
売却した年に除却の処理をしてください。売却年の償却をどこまで計上するかも、方針が分かれる部分です。ここは確認を取ることをおすすめします。
下取りに出した場合の確定申告の扱い
新しい機械を買うと同時に古い機械を下取りに出した場合も、売却したことに変わりはありません。
「値引きしてもらった」という感覚になりますが、税務上は次の2つが同時に起きています。
- 古い機械を下取り額で売却した
- 新しい機械を本体価格で購入した
だからこそ、見積書で「本体価格」「値引き」「下取り額」が分かれていることが重要です。まとめて1行になっていると、処理の根拠が作れません。
下取りを検討している段階なら、内訳を分けて出すよう販売店に伝えておいてください。金額の妥当性を判断するうえでも役に立ちます。
消費税はかかるか|課税事業者と免税事業者
所得税とは別に、消費税の論点があります。
| 事業用資産の売却 | |
|---|---|
| 課税事業者 | 課税売上として消費税の計算に含める |
| 免税事業者 | 消費税の納税義務がない |
所得税では譲渡所得として事業の外に出る一方、消費税では事業として行う資産の譲渡に当たります。扱いが揃っていない点に注意してください。
インボイス制度の登録をしている場合は課税事業者になります。売却額が大きいときは、影響を確認しておいてください。
青色申告決算書のどこに書くか
作業は2つに分かれます。
- 青色申告決算書|減価償却の明細から、売却した資産を落とす
- 確定申告書|譲渡所得として、該当する欄に記載する
様式や記入欄は年度によって変わることがあります。具体的な記入位置は、その年の様式と手引きで確認してください。
国税庁の確定申告書等作成コーナーを使うと、案内に沿って進められます。
税理士・税務署に確認すべきケース
次に当てはまる場合は、自己判断で進めないでください。
- 同じ年に複数台をまとめて売った(特別控除は合計に対して50万円)
- 売却額が大きく、譲渡益が50万円を超えそう
- 相続した機械を売った(取得費や所有期間の考え方が変わります)
- 離農にあわせて設備をまとめて処分した
- 補助金を使って導入した機械だった
- 法人での売却、またはインボイス登録後の売却
とくに補助金を使って取得した機械は、処分制限期間が定められていることがあります。税務以前に、売却してよいかの確認が要ります。
税務署は無料で相談を受け付けています。確定申告の時期は混み合うため、早めに動いてください。
農機具の売却と確定申告でよくある質問
数万円で売っただけでも申告が要りますか
譲渡益が特別控除の50万円に収まるなら、課税は生じないのが一般的です。
ただし帳簿に載っている資産であれば、固定資産台帳から落とす処理は必要です。
売却は事業所得の売上に入れればよいですか
取得価額10万円以上の減価償却資産であれば、原則として譲渡所得です。売上に入れる処理とは異なります。
ここは間違えやすい部分なので、確認をおすすめします。
下取りは値引きとして処理してよいですか
税務上は「売却」と「購入」が別々に起きています。値引きとしてまとめると、根拠が作れなくなります。
見積書の段階で内訳を分けてもらってください。
帳簿に載っていない古い機械を売りました
償却が終わっている、あるいは記載が残っていない場合でも、区分としては譲渡所得です。
取得費の計算が難しくなるため、金額が大きい場合は相談してください。
赤字で売った場合はどうなりますか
未償却残高を下回る金額で売れば、計算上は譲渡損が出ます。他の譲渡益と通算できる場合があります。
通算の可否は状況によります。ここも確認が要るところです。
まとめ
- 取得価額10万円以上の農機具の売却は、事業所得ではなく譲渡所得(国税庁 No.3105)
- 計算式は譲渡価額 −(取得費+譲渡費用)− 50万円(同 No.3152)
- 取得費は買値ではなく未償却残高
- 特別控除50万円は1台ごとではなくその年の合計に対して
- 所有5年超なら長期で、2分の1が課税対象
- 個人事業主の仕訳は事業主借・事業主貸を使う方法が一般的(法人は別)
- 下取りも売却。見積書で内訳を分けてもらう
- 複数台・相続・補助金導入機は必ず税理士または税務署へ
税額を見積もるにも、まず売却額が分からないことには始まりません。査定は無料で受けられます。
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